■ 映画はわかりやすくない方が面白い!テレビ界の巨匠が語る映画とドラマの違い

http://www.cinematoday.jp/page/N0079199

 

テレビの魅力は「分かりやすさ」、映画の魅力は「分かりづらさ」。なんとも明快だ。その特色を論ずることに意味はないし、それこそ視聴者と観客の好みの問題だ。しかし「監督」にとっては、まるで別の世界。機材が、役者が同じでも、スタッフや編集室が同じでも、似てすらいない異次元の両作なのだ。誤解を恐れずに言ってしまえば、「テレビ」は、”設計通りに創る”ことが大前提、ルールを遵守しつつ基本クオリティを落とせない難解なパズル合わせの責任を背負い、同じチームスタッフで前作以上のクオリティを目して戦う”運営型”。「映画」は、”常に違う設計で創る”ことが大前提、任される限りには自由に比例するそれ以上に業界生命と出資者への責任を背負い、本作のために編成されるオリジナルチームを率いる”創業型”だ。

 

完成作品の評価基準もまた、大きく異なる。テレビは、たった一度の放送を対象に、視聴率という数字で示されるシビアな世界。そのため、一瞬たりとも視聴者の意識をそらさない為に、”分かりやすく”、”濃密な魅力”を詰め込み、「音だけ」でも「画だけ」でも理解ができ、「嫌われない」ことを重視して、全世帯をターゲティングする。一方映画は、上映終了の最後までを観通すことを決意し、少なくない現金を支払って更に、劇場まで足を運んでくれた観客を迎える恐怖の世界。想像性豊かで勉強家の観客たちは、”過剰説明”には苛立ち、金銭、時間、足労対価に見合う”望む方角の裏切り”を求め、上限無く、ハードルを上げる。”監督”はその全てを飛び越えようと、命を捧げて”謎”を仕掛け、作品の中から恐怖の審判に、解けずも納得できる大喜利を披露するわけだ。公開初週の観客動員では”期待値の高さ”が、第二週以降の動員数が”完成度”が評される。映画監督は公開第二週を生き抜くための”法則”を模索し続けているのだ。しかし、1895年12月28日フランス、現在の”ホテル・スクリーブ・パリ”から始まった121年目の映画史は今日の監督のためにあらゆる成功法則をご教示くださっているようだが、全然、わかりやすくない。 [ エドリード・ジャパン編集部 / EDL-editorial dept.]