■ カールツァイス 「作れるのは最高性能の1パーツのみ! 誰でも組もう! 自然な”メガネ型スマートグラス”を創ろう!!」

 

http://wired.jp/2016/01/31/zeiss-smart-lenses/

 

ナンとも地味だ。「カメラレンズ屋が、潮流のAR(拡張現実)にチャレンジするも、ぜんぜんダメだった。このまま頑張って10年経っても、完成はできないのかもしれない。誰か組まないか?」というニュースだ。しかしどうだろう。それが、創業170年ドイツの老舗メーカーにして今なお絶大な信頼を誇る最上級ブランド ”Carl Zeiss社” なら。一般人シャットアウトの新製品プロトタイプ発表会期中に行った、公式発言だとしたなら。ともすれば、株価暴落では済まない事態になることも珍しくない、ラスベガス最大規模のCES2016 (Consumer Electronics Show2016)開催中、その場所であったなら。

 

「世界のムーブメントは見えた、挑戦した、でも全然ダメだ、我々が作れるのはただ1つの部位だけだ、でもそれは最高なんだ、誰か組む相手を探してるんだ、我々では完成させることができない。世界が求めているタイミングは、”今”なんだ!」

 

これほど明確なビジョンと、強いメッセージを発する勇気はどれ程のものか。小型のミラーレスカメラを常用する日々に久しく、防湿庫に寝かせたままになっていたツァイスレンズを取り出してみた。正直に告白してしまえばわたしは今、泣いてしまいそうだ。中学生時代にあししげく通った洋書店、魅了されたファッション誌「VOGUE」表紙のミューズたちを撮影していたのは、ツァイスレンズだった。皆さんには、ピンとこない話だろうか。それでも、アポロ11号が持ち帰ったNASA発表の”月面写真”はご存じだろう。1万3000枚の写真を残し、”月の石”と引き替えに、カールツァイスレンズ「Zeiss Biogon 5.6/60mm」は今も、月面に残されている。1万3000人の社員はこの素晴らしい自社を、誇りに思っていることだろう。当然だ。時代はいつも”Carl Zeiss”を通して残されてきた。きっと、このプロジェクトも。 [ エドリード・ジャパン編集部 / EDL-editorial dept.]